黒長さん
805 :本当にあった怖い名無し:2019/10/03(木) 17:45:40.35 ID:BvPWeAdH/[1/3]
数ヶ月前に体験した話
その日は家でケムリクサを見ていて、その途中で電話が掛かってきた
大学で知り合ったAくんからの電話なのだが、出てみると、Aくんの嗚咽混じりの声が聞こえてきて
「黒長さんに殺される」だとか「裏切られた」とか泣き喚いていた
明らかに普通ではなさそうだし、まだ自分の家にいるらしいので取り合えずAくんの家に車で向かってみた
家の玄関は特に鍵も掛かっておらず、チャイムを鳴らしてみても反応がない
中にいることは確かなので玄関を開けて一歩踏み込んだ途端、急に周りの空気が冷たくなった
別にクーラーをつけるような季節でもないし、何がおかしいかって、玄関を開けたときはなんとも思わなかったのに、中に入った途端に寒くなったんだ
廊下は強盗に荒らされたような痕跡はなく、前にお邪魔したときと変わった様子はなかった。物音ひとつしない
自分の部屋にいるだろうと思い階段を上がって二階へ向かったけど、何かしら異臭がする。その異臭はAくんの部屋に近づくにつれて徐々に強くなっていく
Aくんの部屋の前まで来て確信した、もうなんか絶対にやらかしている
部屋の扉には、何回も何回も刃物で切り付けたような跡があったんだ。木製の扉なんだけど、表面の塗装が剥がれて、その下の木が深く抉られていた
意外なことに鍵は掛かっていなくて、扉はすんなりと開いた
すんなりと開いたのだが、開けて激しく後悔した
部屋の中は酷く荒れていて、折れた椅子やら本の破かれたページやらが滅茶苦茶に散乱していた
その中心には排泄物まみれで痩せ細ったAくんが体育座りしていて、見開いた目で俺を見上げていたんだ
俺は救急車を呼び、Aくんは病院に運ばれた
幸い(?)、軽い栄養失調だけで体に異常はなかったらしい
806 :本当にあった怖い名無し:2019/10/03(木) 17:46:05.99 ID:BvPWeAdH/[2/3]
ここから先はAくんから聞いた話だが、彼女から誘われて黒長さんをすることになったらしい
黒長さん、というのは「こっくりさん」や「さとるくん」みたいな遊びの一種で、成功すると何でも願いが叶うそうな
黒長さんを呼ぶ方法は少し面倒で
1、塩水を用意し、部屋の全ての扉と窓に鍵をかける
2、携帯またはPCのホーム画面を黒の単色に設定する
3、掲示板かSNSに「黒長さん黒長さん、お待ちしております」と書き込む
4、相方が「黒長さん黒長さん、○○(呼ぶ側)くんが呼んでいます」と書き込む
5、一時間待つ(二時間待ってもよい)
6、その後、三十分以内に相方に「黒長さん黒長さん、ありがとうございました」と書き込んでもらう(二時間待ったときは十五分以内に)
7、書き込みを確認したら、すぐに塩水を飲み干す。これで終了
というもの
ただし、いくつか注意点があって、
1、終了するまでは決してホーム画面を覗いてはならない
2、終了するまでは決して部屋を出てはならない
3、儀式の途中で抜けてはならない
だそうだ
で、Aくんが呼ぶ側になりスマホでゲームをしながら待っていたのだが、一時間になっても二時間になっても彼女の書き込みがない
そこで彼女に電話をしようとしてホームボタンを押したら、黒く設定したホーム画面が目に入ったらしい。バカなの?
ホーム画面を見た途端、背中に冷たくて長いムカデがよじ上ってくるような感触がして耐えられず壁や床に背中を叩きつけて暴れていたら、今度は誰かが階段を駆け上がる音が聞こえて、固まっていたらドアノブをガチャガチャガチャガチャ回された挙句扉を激しく叩かれたらしい
背中に冷たい虫が湧く感覚と扉を破かれる恐怖に襲われながら、まる二日が経過
二日もの間何も食えず、トイレにも行けず、眠ることもできずに部屋で閉じこもっていたという
これ以上は限界だと察したAくんは知り合いに片っ端から電話をかけることにして、一番最初に電話した先が俺だそうだ
807 :本当にあった怖い名無し:2019/10/03(木) 17:46:34.60 ID:BvPWeAdH/[3/3]
Aくんが退院して数日後、俺と二人で彼女の家に突撃したのだが、玄関先で別れを告がれて二人で( ゚д゚)ポカーン
Aくんは女たらしなことで有名で、よく女関係でトラブルを起こしていたのだが、今回の件もAくんの浮気を知った彼女が復讐のつもりで黒長さんに誘ったそうだ
とはいえ、当日Aくんの家に行ったか聞いてみても、様子を見に家の前を通ったことはあっても中には入っていないらしい
あともうひとつ、入院中のAくんにお見舞いに行ったときに「どうやって家の中に入ったんだ?」と質問されて普通に開いていたと答えたら、「んなわけあるか俺は閉めたぞ!」と返された
部屋の扉だって、俺に電話する前はきちんと鍵が閉まっていたらしい。あと少し遅かったら、本当に危なかったのかもしれん
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