ジェヴォーダンの獣
ジェヴォーダンの獣(ジェヴォーダンのけもの、La bête du Gévaudan)は、18世紀のフランス・ジェヴォーダン地方(現在はロゼール県の一部)に出現した、オオカミに似た生物。1764年から1767年にかけマルジュリド山地周辺に現れ、60人から100人の人間を襲った。獣が何であったかは、現在も議論されている。 事件は未確認動物学と陰謀の両方の面の憶測がされている。
15世紀に首都パリに迫ったオオカミの群れの史実が有名であるが、18世紀後半のフランスでは、ソワソンやペリゴール(現在のドルドーニュ県)など各地でオオカミ被害が相次いでいた。
外観編集
獣はウシとほどの大きさのオオカミに似た生物で、広い胸部をし、長く曲がりくねった尻尾はライオンのような毛皮の房で先端まで覆われていた、と記述されている。そして、小さく真っ直ぐな耳と巨大な犬歯がはみ出ている、グレイハウンド犬のような頭部をしていたという。獣は全身が赤い毛で覆われ、特筆すべきは黒い縞模様が背中の長さ分あったことだった。
襲撃編集
獣が最初に襲撃したのは、1764年6月1日だった。ランゴーニュ(現在のロゼール県のコミューン)から来た女性が、樹木の間からオオカミに似た動物が現れ、自分に向かって真っ直ぐに走ってくるのを目撃した。しかし、農場の雄牛たちによって追い払われた。
6月30日、公式に確認された初めての犠牲者14歳の少女ジャンヌ・ブルが、ランゴーニュから遠くないレ・ウバックの村近くで行方不明となり翌日、内臓を食われた遺体となって発見される。
この生き物の伝えられた殺害の仕方は捕食動物としては異常で、しばしば獲物の頭部を標的にし、普通なら捕食動物が狙う脚や喉を全く無視していた。頭部は砕かれるか食いちぎられていた。伝えられるところによれば、獣はウシを避ける傾向があり、農場の家畜ではなく人間を標的としているようにみられていた。何度も、同じ草原にウシがいたというのに、人間を襲ったとされる。
獣は同類をもう一匹連れていた、あるいは子連れだった、という報告がいくつかある。近くに人間(獣の飼主)がいたことを暗示する証言は記録されていない。
犠牲者の確かな人数を調べることが難しいため、確認された記録をもとに、198回襲撃がされ、死者は88人、負傷者は36人であると見積もられた。他の情報源においては上記の結果を上回り306回の襲撃、死者123人、負傷者51人とされていた。獣の好んだ獲物は女性と子供で、農場で少人数で仕事をしていたことから、たやすく狙われたと考えられる。一方で男性は、鎌や草刈り鎌のようなものを武器として使うことが可能だったうえ、しばしば集団で草原で作業していたため狙われにくかったと思われる。
コメント編集