嗅げる人

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    212 :本当にあった怖い名無し:2010/03/13(土) 01:15:22 ID:9DpGI0OI0
    バイト先の会社の寮で、幽霊騒ぎがあった。
    俺は入社して1年も経たないのでよく知らなかったが、以前から気味の悪い事が起こっていたらしい。
    寮に入っている社員のTさんの部屋が、特に出現率が高いそうで、俺に相談してきた。
    T「この前もさ、顔洗って鏡を見たら、俺の後ろに怖い女が映ってたんだよ。
     ウワッと思って振り向いたら、まだ居るんだよ…せめて振り向いたら居なくなってほしい…」
    Tさんは精神的にカナリまいっているようだ。
    俺は子供の頃から霊感が強く、いわゆる『見える人』だが、だからと言って霊をどうこう出来るわけではない。
    しかし、仕事中もずっとウツロな目をしているTさんを放っておくのも酷だ。
    俺は同時期に入ったバイトのZを誘って、寮に行くことにした。
    Zは子供の頃から霊嗅覚が強く、いわゆる『嗅げる人』だ。
    それが何を意味するのか、寮での実践を報告する。


    213 :本当にあった怖い名無し:2010/03/13(土) 01:16:22 ID:9DpGI0OI0
    俺たちが行くと、Tさんはよほど一人が心細かったのか、わざわざ外まで出迎えてくれた。
    けど俺は寮を見た時から、なんとなくイヤな感覚に襲われていた。
    夜中にパトカーの回転灯が集まっている場所を見るような、いやな感じだ。
    …ふと、窓の1つに目をやると、閉じたカーテンが不自然にめくれ上がり、
    そこから妙に小さな顔っぽいのが、こっちを見ている気がした。
    俺にはそれが、『近づくな』の警告だと思えた。
    でも、極力明るく振舞うTさんに気を使って、言えずに見られるがまま。
    俺「えー…と、どうだ、Z。何か感じないか?」
    Z「ん…いや、特に無いな。まあ上がらせて貰おうか」
    T「おう、酒も用意しといたぜ。さ、さ、入れよ、な?」
    ハッキリ言って俺は、今日はやめておこう気分になっていたが、下戸のTさんに酒を用意されては退路が失われた。


    214 :本当にあった怖い名無し:2010/03/13(土) 01:17:09 ID:9DpGI0OI0
    Tさんの部屋に近づくほど、イヤな感覚が増す。
    案の定、さっきのめくれカーテンの部屋だった。
    飲んでも気分が盛り上がるハズもないが、度胸付けの気持で飲む。
    さりげなくカーテンを直しておいた。
    Tさんによると、夜寝ている時が一番怖いのだと言う。
    最近はマトモに眠れなかったそうだ。
    今日は人が居ることに安心したのか、飲んでも無いのにウトウトとしている。
    俺「布団で寝たらいいですよTさん」
    T「ん、ああ、スマンな…」
    Z「明日も仕事だし、俺らも寝るか」
    この部屋ではとても眠れるような気分ではないが、俺とZも毛布を借りて寝ることに。
    なんとなくカーテン側はイヤだったので、離れてソファーに横になった。
    俺の様子が変だったのか、Zが小声で聞いてきた。
    「なあ…何か見たのか?」
    俺も小声で返す。
    「ああ、ここに入る前に気味悪いのを…Zは?」
    「特に無いって。俺は見れないもん、嗅げるだけ」
    「…何度聞いてもわかんねーよソレ…あの、さ、幽霊ってどんなニオイなの?」
    「…それぞれだな、モノによるよ。一つ言えるのは、人間のニオイじゃないって事かな」
    それは少しわかる。俺も霊は人間には見えないから。


    215 :本当にあった怖い名無し:2010/03/13(土) 01:17:50 ID:9DpGI0OI0
    …いつの間にか電気が消えている。どうやら寝ていた?そんな気はなかったが…
    体の向きを変えようとして、奇妙な音に気づく。
    ペタペタッ、ペタペタッと、低いところから聞こえてくる。
    …床に手をつける音…?何かが床を這い歩いて…
    そう判断している最中に、ペタペタのリズムが早くなり、体が強烈に重くなった。
    金縛りとは違う、目を開けるにも全力を使うような状態…
    俺が見たのは、正座で俺の胸の上に乗る女だった。
    昔のアイドルが着るような黄色の派手な服だが、体は普通だ。
    頭が野球ボールほどしかなく、頭蓋骨を抜いて干しあげたような質感をしている。
    結果、やはり人間には見えない!
    「…Z…お…い…Z」
    声を絞り出す俺に、人間外女の顔が近づく…Z!気づいてくれ!
    「ん…なんだ、どうし…あ、くせーな、居るなコレ、クンクン…」
    ニオいながらこっちに近づいて来るZ。見えないは無敵。
    Z「クンクン…この辺からだな…クン…え?なに、オマエの上に居んの?
     うっわマジにか…クンクン…あ、コレはね、なんつーんだ、ペット売り場系のニオイだな…小動物。
     あんまりたいした霊じゃないのかも…
     クンク…ぇひっ!な、何だ、ひょっとしてこの辺アタマじゃね?
     人外の部分は臭ぇーんだ、コイツ相当ブサイクだろ?
     クン…ゴフォッ!なんだろ、ハムスターとかじゃねえぞ、亀の食い残したエサが水槽の底に溜まっ」
    「あ、もういいよ、居なくなったから」
    Zがニオイ分析~表現のあたりで、大抵の霊は消える。(女性霊は早く消える傾向がある)
    幽霊にとってニオイを嗅がれるのは余程ショックなのか、2度と出て来ないらしい。

    翌日、久しぶりに熟睡できたというTさんが、職場でこの話を披露した。
    もともと冗談が好きなTさんの話に、ほとんどの人は半信半疑だが、
    寮の人は感謝と畏敬を込めてか、Zを下の名前『カオル』と呼ぶようになった。


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    引用元:死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?238

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