コンテンツにスキップ
サイドバーの切り替え
検索
日本語
アカウント作成
個人用ツール
アカウント作成
ログイン
ログアウトした編集者のページ
もっと詳しく
トーク
投稿記録
案内
メインページ
人気のページ
利用規約
最近の出来事
最近の更新
おまかせ表示
お問い合わせ
ツール
リンク元
関連ページの更新状況
特別ページ
ページ情報
他言語版
「
危険な好奇心
」を編集中 (節単位)
ページ
議論
日本語
閲覧
編集
ソースを編集
履歴表示
その他
閲覧
編集
ソースを編集
履歴表示
警告:
ログインしていません。編集を行うと、あなたの IP アドレスが公開されます。
ログイン
または
アカウントを作成
すれば、あなたの編集はその利用者名とともに表示されるほか、その他の利点もあります。
スパム攻撃防止用のチェックです。 けっして、ここには、値の入力は
しない
でください!
上級
特殊文字
ヘルプ
見出し
レベル2
レベル3
レベル4
レベル5
形式
挿入
ラテン文字
ラテン文字拡張
国際音声記号
記号
ギリシア文字
ギリシア文字拡張
キリル文字
アラビア文字
アラビア文字拡張
ヘブライ文字
ベンガル文字
タミル文字
テルグ文字
シンハラ文字
デーヴァナーガリー文字
グジャラート文字
タイ文字
ラオス文字
クメール文字
カナダ先住民文字
ルーン文字
Á
á
À
à
Â
â
Ä
ä
Ã
ã
Ǎ
ǎ
Ā
ā
Ă
ă
Ą
ą
Å
å
Ć
ć
Ĉ
ĉ
Ç
ç
Č
č
Ċ
ċ
Đ
đ
Ď
ď
É
é
È
è
Ê
ê
Ë
ë
Ě
ě
Ē
ē
Ĕ
ĕ
Ė
ė
Ę
ę
Ĝ
ĝ
Ģ
ģ
Ğ
ğ
Ġ
ġ
Ĥ
ĥ
Ħ
ħ
Í
í
Ì
ì
Î
î
Ï
ï
Ĩ
ĩ
Ǐ
ǐ
Ī
ī
Ĭ
ĭ
İ
ı
Į
į
Ĵ
ĵ
Ķ
ķ
Ĺ
ĺ
Ļ
ļ
Ľ
ľ
Ł
ł
Ń
ń
Ñ
ñ
Ņ
ņ
Ň
ň
Ó
ó
Ò
ò
Ô
ô
Ö
ö
Õ
õ
Ǒ
ǒ
Ō
ō
Ŏ
ŏ
Ǫ
ǫ
Ő
ő
Ŕ
ŕ
Ŗ
ŗ
Ř
ř
Ś
ś
Ŝ
ŝ
Ş
ş
Š
š
Ș
ș
Ț
ț
Ť
ť
Ú
ú
Ù
ù
Û
û
Ü
ü
Ũ
ũ
Ů
ů
Ǔ
ǔ
Ū
ū
ǖ
ǘ
ǚ
ǜ
Ŭ
ŭ
Ų
ų
Ű
ű
Ŵ
ŵ
Ý
ý
Ŷ
ŷ
Ÿ
ÿ
Ȳ
ȳ
Ź
ź
Ž
ž
Ż
ż
Æ
æ
Ǣ
ǣ
Ø
ø
Œ
œ
ß
Ð
ð
Þ
þ
Ə
ə
書式設定
リンク
見出し
箇条書き
ファイル
注釈
議論
解説
入力内容
出力結果
斜体
''斜体テキスト''
斜体テキスト
太字
'''太字テキスト'''
太字テキスト
太字かつ斜体
'''''太字かつ斜体'''''
太字かつ斜体
==危険な好奇心3== 【携帯】連投できない人の怖い話 1投目【歓迎】<br> <br> '''156 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/27(木) 04:50:46 ID:2G2sPLliO'''<br> 俺は山に入るのを躊躇した。<br> 『中年女』『変わり果てたハッピーとタッチ』『無数の釘』<br> 頭の中をグルグルと、鮮やかに『あの夜の出来事』が甦ってくる。<br> 俺は慎の様子を伺った。慎は黙って山を見つめていた。慎も恐いのだろう。<br> やっぱ、入るの恐いな・・・と言ってくれ!と俺は内心願っていた。<br> 慎はズボンのポケットからインスタントカメラを取り出し、右手に握ると、<br> 俺の期待を裏切り、「よし」と小さく呟き、山へ入るとすぐさま走りだした。<br> 俺はその後ろ姿に引っ張られるように走りだした。<br> 慎は振り返らずに走り続ける。<br> 俺は必死に慎を追った。一人になるのが恐かったから必死で追った。<br> 今思えば慎も恐かったのだろう。恐いからこそ、周りを見ずに走ったのだろう。<br> <br> あの場所が徐々に近づいてくる。<br> 思い出したくもないのに、あの夜の出来事を鮮明に思いだし、心に恐怖が広がりだした。<br> 恐怖で足がすくみだした時、あの場所に着いた。<br> そう、『中年女が釘を打っていた場所』『中年女がハッピー、タッチを殺した場所』『中年女に引きずり倒された場所』<br> 『中年女と出会ってしまった場所』<br> <br> <br> '''160 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/27(木) 05:19:27 ID:2G2sPLliO'''<br> 俺は急に誰かに見られているような気がして、周りを見渡した。<br> いや、誰かにでは無い。中年女に見られているような気がした。<br> 山特有の静寂と、自分自身の心に広がった恐怖がシンクロし、足が震えだす。<br> 立ち止まる俺を気にかける様子無く、慎はあの木に近づきだした。<br> 何かに気付き、慎はしゃがみ込んだ。<br> 「ハッピー・・・」<br> その言葉に俺は足の震えを忘れ、慎の元に歩み寄った。<br> ハッピーは既に土の一部になりつつあった。頭蓋骨をあらわにし、その中心に少し錆びた釘が刺さったままだった。<br> 俺は釘を抜いてやろうとすると、慎が「待って!」と言い、写真を一枚撮った。<br> 慎の冷静さに少し驚いたが、何も言わず俺は再び釘を抜こうとした。<br> 頭蓋骨に突き刺さった釘をつまんだ瞬間、頭蓋骨の中から見たことの無い、多数の虫がザザッと一斉に出てきた。<br> 「うわっ!」<br> 俺は慌てて手を引っ込め、立ち上がった。<br> ウジャウジャと湧いている小さな虫が怖く、ハッピーの死体に近づく事が出来なくなった。<br> それどころか、吐き気が襲って来てえずいた。<br> 慎は何も言わずに背中を摩ってくれた。<br> 俺はあの夜ハッピーを見殺しにし、またハッピーを見殺しにした。<br> 俺は最高に弱く、最低な人間だ。<br> <br> <br> '''161 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/27(木) 05:39:52 ID:2G2sPLliO'''<br> 慎はカメラを再び構え、あの木を撮ろうとしていた。<br> 「ん?!おい!ちょっと来てーや!」<br> 何かを発見し、俺を呼ぶ慎。俺は恐る恐る慎の元に歩み寄った。<br> 慎が「これ、この前無かったよな?」と、何かを指差す。<br> その先に視線をやると、無数に釘の刺さった写真が・・・<br> ん?たしか前もあったはずじゃ・・・<br> いや!写真が違う!<br> 厳密に言うと、この前見た4・5歳ぐらいの女の子の写真はその横にある。<br> つまり、写真が増えている!<br> 写真の状態からして、ここ2・3日ぐらいに打ち込まれているであろう。<br> この前に見た写真は、既に女の子かどうかもわからないぐらいに、雨風で表面がボロボロになっている。<br> 新しい写真も、4、5歳ぐらいの女の子のようだ。<br> この時は慎に言わなかったが、俺は一瞬、新しい写真が俺だったらどうしよう!!とドキドキしていた。<br> 慎はカメラに、その打ち込まれた写真を撮った。<br> そして、「後は秘密基地の彫り込みを撮ろう」と言い、又走りだした。<br> 俺は近くに中年女がいるような錯覚がし、一人になるのが怖く、慌てて慎を追った。<br> <br> <br> '''163 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/27(木) 06:07:52 ID:2G2sPLliO'''<br> 秘密基地に近いてきて、俺は違和感を感じ、「慎!」と呼び止めた。<br> 違和感。<br> いつもなら、秘密基地の屋根が見える位置にいるはずなのだが、屋根が見えない。<br> 慎もすぐに気付いたようだ。<br> このとき、脳裏に『中年女』がよぎった。<br> 胸騒ぎがする。鼓動が激しくなる。<br> <br> 慎が「裏道から行こう」と言った。俺は無言で頷いた。<br> 裏道とは、獣道を通って秘密基地に行く、従来のルートとは別に、<br> 茂みの中をくぐりながら、秘密基地の裏側に到達するルートの事である。<br> この道は、万が一秘密基地に敵が襲って来た時の為に造っておいた道。<br> もちろん、遊びで造っていたのだが、まさかこんな形で役に立つとは・・・<br> この道なら万が一基地に『中年女』がいても、見つかる可能性は極めて低い。<br> 俺と慎は四つん這いになり、茂みの中のトンネルを少しずつ進んだ。<br> <br> そして秘密基地の裏側約5M程の位置にさしかかった時、基地の異変の理由が分かった。<br> バラバラに壊されている。<br> 俺達が造り上げた秘密基地は、ただの材木になっていた。<br> しばらく様子を伺ったが、中年女の気配もないので俺達は茂みから抜けだし、秘密基地の跡地に到達した。<br> <br> <br> '''181 『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/27(木) 16:32:42 ID:2G2sPLliO'''<br> 俺達はバラバラに崩壊された秘密基地を見て、少し泣きそうになった。<br> 秘密基地は言わば、俺達三人と2匹のもう一つの家。<br> バラバラになった材木の片隅に、大きな石が落ちていた。恐らく誰かが、これをぶつけて壊したのだろう。<br> 誰かが?・・いや、多分『中年女』が・・・。<br> <br> 慎が無言で写真を撮りだした。<br> そして数枚の材木をめくり、『淳呪殺』と彫られた板を表にし、写真を撮った。<br> その時、わずかな板の隙間からハエが飛び出し、その隙間からタッチの遺体が見えた。<br> ハッピーとタッチ。<br> 秘密基地よりもかけがえの無い2匹を、俺達は失った事を痛感した。<br> <br> 慎は立ち上がり、「よし、このカメラを早く現像して、警察に持って行こう」と言った。<br> 俺達は山を駆け降りた。<br> 山を降り、俺達は駅前の交番へ急いだ。<br> このカメラに納められた写真を見せれば、中年女は捕まる。俺らは助かる。<br> その一心だけで走った。<br> <br> 途中でカメラ屋に寄り、現像を依頼。<br> 出来上がりは30分後と言われたので、俺達は店内で待たせてもらった。<br> その間、慎との会話はほとんど無かった。ただただ 写真の出来上がりが待ち遠しかった。<br> <br> そして30分が過ぎた。<br> <br> <br> '''190 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/27(木) 22:54:20 ID:2G2sPLliO'''<br> 「お待たせしましたー」<br> バイトらしき女店員に声をかけられた。<br> 俺と慎は待ってましたとばかりにレジに向かった。<br> 女店員は少し不可解な顔をしながら、<br> 「現像出来ましたので、中の確認をよろしくお願いします」といいながら、写真の入った封筒を差し出した。<br> まぁ現像後の写真が、犬の死骸や釘に刺された少女の写真のみだから、不可解な顔をするのも当然だが・・・<br> 慎はその場で封筒から写真を取り出し、すべての写真を確認し、<br> 「大丈夫です。ありがとうございました」と言い、代金を支払った。<br> 店を出て、すぐさま交番へ向かった。<br> <br> これで全てが終わる。<br> 駅前の交番へ二人して飛び込んだ。<br> 「ん?!どうしたの?」<br> 中にいた若い警官が、笑顔で俺達を迎えてくれた。<br> 俺達はその警官の元に歩み寄り、「助けてください!」と言った。<br> <br> 俺と慎は、あの夜の出来事を話した。裏付ける写真も一枚一枚見せながら話した。<br> そして、今も『中年女』に狙われている事を。<br> <br> 一通り話し終わると、その警官は穏やかな表情で「お父さんやお母さんに言ったの?」<br> 俺たちは親には伝えてないと言うと、<br> 「ん~んぢゃ、家の電話番号教えてくれるかな?」と警官は言い出した。<br> <br> <br> '''286 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/30(日) 01:58:44 ID:Ey4nh9XjO'''<br> 慎が「なんで親が関係あるの?狙われているのは俺達だよ?!」とキレ気味に言い放った。<br> ちなみに慎の両親は医者と看護婦。高校生の兄貴は某有名私立高校生。<br> 俺達3人の中で一番裕福な家庭だが、一番厳しい家庭でもある。<br> あの夜は親に嘘をついて秘密基地に行き、このような事に巻き込まれたとバレれば、<br> 俺や淳もだが、慎が一番洒落にならないのである。<br> 「助けてよ!警察官でしょ!!」と慎が詰め寄る。<br> 警官は少し苦笑いして、<br> 「君達小学生だよね?やっぱり、こーゆー事はキチンと親に言わなきゃダメだよ」<br> と、しばらくイタチゴッコが続いた。<br> あげくに警官は、「じゃあ君達の担任の先生は何て名前?」など、俺達にとっては脅しに取れる言葉を投げ掛けてきた。<br> まぁ警官にとっては、俺達の保護者及び責任者から話を聞かないと・・・って感じだったのだろうが、<br> 俺達にとって、こういう時の親や先生は、怒られる対象にしか考えられなかった。<br> そうこうしているうちに、俺達の心の中に、目の前にいる警官に対して不信感が芽生えてきた。<br> このまま此処にいれば、無理矢理住所を言わされ、親にチクられる!と。<br> <br> <br> '''290 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/30(日) 02:31:44 ID:Ey4nh9XjO'''<br> この警官は、俺達の話を信じてくれてないのでは?と俺は思い始めた。<br> 俺や慎が必死に助けを求めているのに、『親』『先生』ばかり言ってくる。<br> 俺達は『中年女』の存在を裏付ける、証拠写真まで持参しているのに・・・<br> 俺はもう一度警官に写真を見せつけ、「犬をこんな殺し方する奴なんだよ!」と言った。<br> すると警官はしばらく黙り込み、写真を手に取り、意外な一言を言った。<br> 「ん~・・・これって犬?なの?」<br> 「は?」と俺と慎は驚いた。この人は何を言っているんだろう!と。<br> 続けて警官は、「いや、君達を信じていない訳じゃないよ。じゃあもう少し詳しく教えて。ここが頭?」<br> 警官は冗談を言っている訳では無く、本当に分からないようだ。<br> 俺はハッピーの写真を取上げ、「だから・・・」と説明しかけて言葉が詰まった。<br> 確かにこの写真を客観的に見ると、犬の死骸には見えないかも・・・と思った。<br> 薄茶色に変色した骨に、所々わずかに残っている毛。<br> 俺と慎は、ハッピーが死体になった翌日にも見ているので、<br> 腐食が進んでいても元の形(倒れていた角度、姿)を知っているが、<br> 知らない奴が見ると、ただの汚れた石に汚い雑巾の様なものが、絡んでいるようにしか見えないかも知れない。<br> <br> <br> '''291 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/04/30(日) 02:56:37 ID:Ey4nh9XjO'''<br> 俺は冷静に他の写真も見てみた。<br> 板に刻まれた『淳呪殺』、少女の写真に無数の『釘』。<br> たしかに、『中年女』の存在に直接結び付けるのは難しいのか?<br> ひょっとして警官は、小学生の悪戯と思っていて、先程から『親』『担任』などと言っているのか?<br> 俺はこのまま此処にいては<br><br> だと感じ出した。<br> 「絶対、親を呼び出すつもりだ!」<br> 俺は慎に小さな声で耳打ちした。<br> 慎は無言で頷き、アゴをクイッと動かし、外に出る合図を送ってきた。<br> すると次の瞬間、慎は勢いよく振り向き走りだした。<br> 俺もすぐさま後を追い、交番から抜け出した。<br> 後ろから「おいっ!」と警官が呼び止める声がしたが、俺達は振り向かずに走り続けた。<br> <br> 警官が追い掛けてくる気配は無かった。<br> 警官はおそらく、悪戯しにきた小学生が、嘘を見破られそうになり逃げ出した。とでも思っているのだろう。<br> <br> <br> '''352 :ハッピー・タッチ ◆XhRvhH3v3M:2006/05/01(月) 09:22:18 ID:jZMGGFeIO'''<br> 俺と慎は、警官が追って来ていないことを充分に確認し、道端に座り込み、緊急ミーティングを開催した。<br> 「これからどーする?」<br> 「どーしよ・・・」<br> 俺達は途方に暮れていた。最後の切り札の警察にも信じてもらえず、『中年女』から身を守る術を失った。<br> これで全てが解決すると俺達は思い込んでいただけに、ショックはデカかった。<br> 「このままだったら中年女に住所バレて・・・」<br> 俺は恐かった。<br> すると慎が、「しばらくあの女には出くわさないように注意して・・・」と言いかけたが、<br> 俺はすぐに「もう無理だよ!淳の学年とクラスがバレてる時点で、すぐに俺らもバレるに決まってる!」と少し声を荒げた。<br> 「でも、あの女・・・俺達に何かする気あるのかな?」<br> 「?」<br> 慎が言いだした。<br> 「だってこの前俺ら、学校帰りにあの女に出会ったじゃん。<br> もし何かするつもりなら、あの時でも良かった訳じゃん」<br> 「・・・」<br> 慎が続けて、<br> 「それに山・・・もし俺らのことを許してないなら、山に何らかの呪い彫りとかあってもいーはずじゃん」<br> 「・・・」<br> たしかに。山に行った時、新しい俺達に対する呪い的な物は無かった。<br> 秘密基地は壊されていたが・・・<br> 新しい女の子の釘刺し写真はあったが、俺達・・・まして、フルネームがバレている淳の呪い彫りも無かった。<br> <br> <br> '''355 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/01(月) 09:38:55 ID:jZMGGFeIO'''<br> 俺は内心、そーなのかな?と反論したかったが、しなかった。<br> 慎の言う通り、実は俺達が思っている程『中年女』は俺達の事を怨んでいない、忘れかけている。と思いたかった。<br> 慎はもう一度、「俺らを本気で怨んでいるなら、何らかのアクションを起こすはずだろ?」<br> と、まるで俺を安心さすかのように言った。<br> そして、<br> 「学校の近くをウロついてるのも、俺らを捜してるんぢゃなく、写真の女の子を捜してる可能性もあるだろ?」<br> と言葉を続けた。<br> 「そーか・・・」<br> 俺はその慎の言葉を聞いて、少し気持ちが楽になった感じがした。<br> と言うか、慎の言った言葉を自分自身に言い聞かせ、自分自身を無理矢理納得させようとした。<br> それは現実逃避に近いかもしれない。<br> 慎自身もそうだったのかも知れない。もう『中年女』から逃げる術が見つからず、言ったのかも知れない。<br> しかし俺は、俺達は、<br> 「そーだよな!そのうち俺らのことなんて忘れよる!」<br> 「もう忘れとるって!」<br> 「なんだよチクショー!ビビって損した!」<br> 「ほんま、あの女、泣かしたろか!」<br> とお互い強がって見せた。<br> ある意味、やけくそに近いかもしれない。<br> <br> <br> '''363 :ハッピー・タッチ ◆XhRvhH3v3M:2006/05/01(月) 13:47:06 ID:jZMGGFeIO'''<br> しばらくその場で、慎と『中年女』の悪口などを談笑していた。<br> 辺りは薄暗くなり始め、俺達は帰宅することにした。<br> <br> 慎と別れる道に差し掛かって、<br> 「明日の帰り、淳の様子見に行こっか!」<br> 「おう!そやな!」<br> とお互い明るく振る舞って、手を振り別れた。<br> 俺の心は少し晴れやかになっていた。<br> そーだよな・・・慎の言う通り、中年女はもう俺達の事なんて忘れてるよな・・・と。<br> まるで自己暗示のように、繰り返し言い聞かせた。<br> 足取りも軽く、石を蹴りながら家に向かった。<br> 空を見上げると雲も無く、無数の星がキラキラ輝き、とても清々しい夜空だった。<br> 今まで『中年女』の事でウジウジ悩んでいたのが、馬鹿らしく思えた。<br> <br> 自宅に近づき、その日は見たいアニメがあるのに気付き、俺は小走りで家に向かった。<br> タッタッタッタッ・・・<br> 夜の町内に俺の足跡が響く。<br> タッタッタッタ・・・<br> 静かな夜だった。<br> タッタッタッタッ・・・<br> ん?<br> タッタッタッタ・・・<br> 俺の足音以外に違う足音が聞こえる。<br> 後ろを振り向いた。<br> 暗くて見えないが誰もいない。気のせいか。<br> ナンダカンダ言って俺は小心者だな、と思いながら再び走った。<br> <br> タッタッタッタッ・・・<br> タッタッタッタ・・・<br> ん?誰かいる。<br> <br> <br> '''365 :ハッピー・タッチ ◆XhRvhH3v3M:2006/05/01(月) 14:06:24 ID:jZMGGFeIO'''<br> 俺はもう一度立ち止まり、目を凝らして後ろを眺めた。<br> ・・・やっぱり誰もいない。<br> 確かに俺の足音にマジって、後ろから誰かが走ってくる足音が聞こえたのだが?<br> 俺も淳のように、自分でも気付かないうちに、精神的に『中年女』追い詰められているのか?<br> ビビり過ぎているのか?<br> しばらく立ち止まり、ずーっと後ろを眺めた。<br> ドックンドックン鼓動を打っていた心臓が、一瞬止まりかけた。<br> 15M程後方、民家の玄関先に停めてある原付きバイクの陰に、誰かがしゃがんでいる。<br> いや、隠れている。<br> 月明かりでハッキリ黙視できないが、一つだけハッキリと見えたものがある。<br> コートを着ている!<br> しばらく俺は固まった。<br> 隠れている奴は、俺に見つかっていないと思っているようだが、シルエットがハッキリ見える!<br> 俺は一瞬混乱した。<br> 中年女だ!中年女だ!中年女だ!中年女!中年女!<br> 腰が抜けそうになったが、本能だろうか、次の瞬間、<br> 逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ!逃げなきゃ逃げなきゃ!<br> と、もう一人の俺が俺に命令する。<br> 俺は思いッキリ走った!運動会の時より必死に走った。風を切る音以外聞こえない程、無呼吸で走った。<br> <br> <br> '''413 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/02(火) 17:47:42 ID:VN7lh4fvO'''<br> 無我夢中で家に向かって走った。<br> 家まであと10M。<br> よし!逃げ切れる!<br> !<br> 一瞬、頭にあることがよぎった。<br> このまま家に逃げ込めば、間違いなく家がバレる!<br> 俺はとっさに自宅前を通過し、そのまま住宅街の細い路地を走り続けた。<br> 当てもなく、ただ俺の後方を着いて来ているであろう『中年女』を巻く為に・・・<br> <br> 5分ほど、でたらめな道を走り続けた。<br> さすがに息がキレて来て歩きだし、後ろを振り向いた。<br> もう、『中年女』らしき人影も足音も聞こえて来ない。<br> 俺は周囲を警戒しつつ、自宅方面へ歩き始めた。<br> <br> 再び自宅の10M程手前に差し掛かり、俺はもう一度周囲を警戒し、玄関にダッシュした。<br> 両親が共働きで鍵っ子だった俺は、すばやく玄関の鍵を開け 中に入り、すばやく施錠した。<br> 「フぅー・・・」<br> 安堵感で自然とため息が出た。<br> とりあえず慎に報告しなければと思い、部屋に上がろうと靴を脱ごうとした時、玄関先で物音がした。<br> !?<br> 俺は靴を脱ぐ体制のまま固まり、玄関扉を凝視した。<br> 俺の家の玄関は、曇りガラスにアルミ冊子がしてある引き戸タイプなのだが、曇りガラスの向こう側に・・・<br> 玄関先に誰かが立っている影が映っていた。<br> <br> <br> '''451 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/03(水) 08:46:27 ID:FVrpBt6MO'''<br> 玄関扉を挟んで1M程の距離に『中年女』がいる!<br> 俺は息を止め、動きを止め、気配を消した。<br> いや、むしろ身動き出来なかった。<br> まるで金縛り状態・・・蛇に睨まれた蛙とは、このような状態の事を言うのだろう。<br> 曇り硝子越しに見える『中年女』の影を、ただ見つめるしか出来なかった。<br> <br> しばらく『中年女』は、じっと玄関越しに立っていた。微動すらせず。<br> ここに俺がいることがわかっているのだろうか?<br> その時、硝子越しに、『中年女』の左腕がゆっくりと動き出した。<br> そして、ゆっくりと扉の取手部分に伸びていき、キシッ!と扉が軋んだ。<br> 俺の鼓動は、生まれて始めてといっていいほどスピードを上げた。<br> 『中年女』は扉が施錠されている事を確認すると、ゆっくりと左腕を戻し、再びその場に留まっていた。<br> 俺は依然、硬直状態。<br> すると『中年女』は、玄関扉に更に近づき、その場にしゃがみ込んだ。<br> そして、硝子に左耳をピッタリと付けた。<br> 室内の様子を伺っている!<br> 目の前の曇り硝子に、『中年女』の耳が鮮明に映った。<br> もう俺は緊張のあまり吐きそうだった。鼓動はピークに達し、心臓が破裂しそうになった。<br> 『中年女』に鼓動音がバレる!と思う程だった。<br> <br> <br> '''457 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/03(水) 09:18:17 ID:FVrpBt6MO'''<br> 『中年女』は二、三分間、扉に耳を当てがうと再び立ち上がり、<br> こちら側を向いたまま、ゆっくりと一歩ずつ後ろにさがって行った。<br> 少しづつ硝子に映る『中年女』の影が薄れ、やがて消えた。<br> 「行ったのか・・・?」<br> 俺は全く安堵出来なかった。<br> 何故なら、『中年女』は去ったのか?<br> 俺がここ(玄関)にいることを知っていたのか?<br> まだ家の周りをうろついているのか?<br> もし、『中年女』に俺がこの家に入る姿を見られていて、<br> 俺の存在を確信した上で、さっきの行動を取っていたのだとしたら、<br> 間違いなく『中年女』は、家の周囲にいるだろう。<br> 俺はゆっくりと、細心の注意を払いながら靴を脱ぎ、居間に移動した。<br> <br> 一切、部屋の明かりは点けない。明かりを燈せば、俺の存在を知らせることになりかねない。<br> 俺は居間に入ると真っ直ぐに電話の受話器を持ち、手探りで暗記している慎の家に電話をかけた。<br> 3コールで慎本人が出た。<br> 「慎か?!やばい!来た!中年女が来た!バレた!バレたんだ!」<br> 俺は小声で焦りながら慎に伝えた。<br> 『え?どーした?何があった?』と慎。<br> 「家に中年女が来た!早く何とかして!」<br> 俺は慎にすがった。<br> <br> <br> '''546 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/05(金) 05:04:28 ID:8b48b6KiO'''<br> 『落ち着け!家に誰もいないのか?』<br> 「いない!早く助けて」<br> 『とりあえず、戸締まり確認しろ!中年女は今どこにいる?』<br> 「わからない!でも家の前までさっきいたんだ!」<br> 『パニクるな!とりあえず戸締まり確認だ!いいな!』<br> 「わかった!戸締まり見てくるから早く来てくれ!」<br> <br> 俺は電話を切ると、戸締りを確認しにまずは便所に向かった。<br> もちろん家の電気は一切つけず、五感を研ぎ澄まし、暗い家内を壁づたいに便所に向かった。<br> まずは便所の窓を、そっと音を立てず閉めた。<br> 次は隣の風呂。<br> 風呂の窓もゆっくり閉め、鍵をかけた。<br> そして風呂を出て、縁側の窓を確認に向かった。<br> 廊下を壁づたいに歩き、縁側のある和室に入った。<br> 縁側の窓を見て違和感を覚えた。<br> いや、いつもと変わらず窓は閉まって、レースのカーテンをしてあるのだが、左端・・・人影が映っている。<br> 誰かが外から窓に顔を付け、双眼鏡を覗くように両手を目の周辺に付け、室内を覗いている。<br> 家の中は電気をつけていない為、外の方が明るく、こちらからはその姿が丸見えだった。<br> 窓に『中年女』が、ヤモリの如く張り付いている。<br> 俺は腰が抜けそうになった。<br> <br> <br> '''548 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/05(金) 05:31:11 ID:8b48b6KiO'''<br> これは動物の本能なのだろうか?<br> 肉食獣を見つけた草食動物のように、俺はとっさにしゃがみ込んだ。<br> 全身が無意識に震えていた。<br> 『中年女』からこちらは見えているのか?<br> 『中年女』はしばらく室内を覗き、そのままの体勢で、ゆっくりと窓の中心まで移動して来た。<br> そしてキュルキュルキュルと、嫌な音が窓からしてきた。<br> 『中年女』の右手が窓を擦っている。左手は依然、目元にあり、室内を覗きながら。<br> キュルキュルキュル<br> 嫌な音は続く。俺の恐怖心はピークに達した。<br> 何かわからないが、『中年女』の奇行に恐怖し、その恐怖のあまり、声を出す事すら出来なかった。<br> すると『中年女』は後ろを振り返り、凄い勢いで走り去って行った。<br> 俺は何が起きたかわからず、身動きも出来ずに、ただ窓を見ていた。<br> すると窓の向こうの道路に、赤い光がチカチカしているのが見えた。<br> 「警察が来たんだ!」<br> 俺は状況が飲み込めた。<br> 偶然通りかかったパトカーに気付き、『中年女』は逃げて行ったんだと。<br> <br> しばらく俺はしゃがみ込んだまま震えていた。<br> プルルルルル!<br> その時、電話が突然鳴った。もう心臓が止まりかけた。<br> ディスプレイを見ると、慎の自宅からの電話だった。<br> <br> <br> '''551 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/05(金) 05:47:22 ID:8b48b6KiO'''<br> 俺は慌てて電話に出た。<br> 『どう?』<br> 「なんか部屋覗いとったけど、どっか行った・・・」<br> 『そっか、親帰って来たんか?』<br> 「いや、たまたまパトカー通って、それにビビって中年女逃げたんや思う」<br> 『そーなんや!良かった。俺、お前んちの近くに不審者がいるって、通報しといてん。<br> でも、あいつに家バレたんやったら、そろそろ親にも相談しなあかんかもな・・・』<br> 「・・・」<br> 『俺も今日、親に言うから・・・お前も言えよ!もうヤバイよ!』<br> 「・・・うん・・・」<br> そして電話を切った。<br> <br> その30分後、母親がパートから帰って来た。<br> 俺は部屋の電気を消したまま玄関に走り、母の顔を見た瞬間、安堵感からか泣き出した。<br> 母親はキョトンとしていたが、俺はしばらく泣き続けた後、<br> 「ごめんなさい」と冒頭に謝罪をし、『あの夜』の出来事から、さっきの出来事まで説明した。<br> 説明の途中に父親も帰宅し、父には母が説明した。<br> <br> その後、父が無言で和室の窓硝子を見に行った。<br> 窓硝子は、鋭利な何かで凄い傷が付けられていた。<br> 鋭利な何かが五寸釘だと、直感でわかった。<br> 両親は俺を叱らず、母親は俺を抱きしめてくれ、父は警察に電話をかけていた。<br> <br> <br> '''679 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/06(土) 02:25:17 ID:BiI+Rh5RO'''<br> 10分程してから警察が来た。<br> 警察には父が事情を説明していた。<br> 俺は母親と居間にいたが、少ししてから警官が居間に来て、あの夜の事を聞いてきた。<br> ハッピーとタッチの事、木に釘で刺された少女の写真の事、淳の名前が秘密基地に彫られていたこと・・・<br> その後、放課後に出会った事など、『中年女』に係わる全ての事を話した。<br> そして、さっきの出来事も。<br> 鑑識らしき人も来ていて、俺が話している間に窓の指紋を採取していた。<br> 俺が話した内容で、警官がもっとも詳しく聞いてきたことが、少女の写真の事だった。<br> その少女の容姿や面識の有無等聞かれたが、それについては「よく分からない」と答えるしかなかった。<br> そして裏山の地図を書かされ、翌日、警察が調べに行くと言う事になり、<br> 自宅周辺の夜間パトロール強化を約束して、警察官は帰っていった。<br> 結局、指紋は出なかった。<br> <br> しばらくして、慎と淳の親から電話がかかってきた。<br> 親同士で何やら話していたが、『中年女』に関する話というより、学校にどのように説明するかを話していたようだ。<br> <br> <br> '''686 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/06(土) 02:56:49 ID:BiI+Rh5RO'''<br> その夜、俺は何年かぶりに両親と共に寝た。<br> 恥ずかしさなど微塵も無く、純粋に『中年女』が怖く、なかなか寝付け無かった。<br> <br> 次の日の朝、母親に起こされた時には、すでに午前8時を回っていた。<br> 「遅刻する!」と慌てると、母が「今日は家で寝てなさい」と言う。<br> どうやら既に学校に事情を話したらしい。<br> 父はすでに出社していたが、母はパートを休んでいた。<br> 慎や淳も今日は学校を休んでいるだろう・・・と思ったが、あえて電話はしなかった。<br> 慎は恐らく、厳格な両親に怒られている。<br> 淳の両親は、不登校になった淳の真実を知りショックを受けている。<br> と思うと、電話するのが恐かったから。<br> <br> 俺は自室に篭り、『中年女』が早く警察に捕まることだけを願っていた。<br> 一時も早く、追い詰められる恐怖から解放されたかった。<br> 母親は何故か、『中年女』の事を口にしてこなかった。<br> 俺への気配り?と思い、俺も何も言わなかった。<br> <br> 昼飯を食べ、ふたたび自室に篭っていると、ドスっと家の外壁に鈍い音が響いた。<br> 俺はとっさに、慎だ!と思った。<br> あいつは俺を呼び出す時、玄関の呼鈴を鳴らさず、窓に小石を投げてくる事がしばしばあったからだ。<br> <br> <br> '''688 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/06(土) 03:14:45 ID:BiI+Rh5RO'''<br> 俺は窓から外を眺めた。<br> 家の前の路地にある電柱に慎がいるはず!と思ったが、慎の姿は無かった。<br> どこかに隠れているのかと思い、見える範囲で捜したが何処にもいない。<br> その時、俺の部屋の下にあたる庭先から、「キャ!」と母親の声がした。<br> びっくりして窓を開け、身を乗り出して下を見た。<br> そこには母親が、地面を見つめながら口元に手を当てがい、何かを見て驚いていた。<br> 俺は何が起こっているのか分からず、「どーしたの!」と聞いた。<br> 母は俺の声にギクッと反応し、こちらを見上げ、驚いた表情で無言のまま家の外壁を指差した。<br> 俺は良からぬ感じを察したが、母の指差す方向を見た。<br> そこには何やら、ドロっとした紫色した液体と、ゼリー状の物が付いていた。<br> 先程のドスっの音の正体であろう。<br> 視線を母の足元に落とし、その何かを捜した。<br> そこには、内蔵が飛び出た大きな牛蛙の死体が落ちていた。<br> 母はしばらく呆然と立ち尽くしていた。<br> 俺はすぐに『中年女』が頭に浮かんだ。<br> すぐに目で『中年女』の姿を捜したが、何処にも姿は見えなかった。<br> 母はふと思い出したように居間に駆け込み、警察に電話をした。<br> <br> <br> '''690 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/06(土) 04:34:37 ID:BiI+Rh5RO'''<br> 母は青い顔をしていた。恐らくこの時始めて、『中年女』の異常性を知ったのだろう。<br> そうだ、あの女は異常なんだ。<br> きっと今も蛙を投げ込んできた後、俺や母の驚く姿を見てニヤついているはず・・・<br> きっと近くから俺を見ているはず・・・<br> 鳥肌が立った。<br> 警察早く来てくれ!<br> 心の中で叫んだ。<br> もうこの家は家では無い。<br> 『中年女』からすれば鳥籠のように、俺達の動きが丸見えなんだ。<br> 常に見られているんだと感じ出した。<br> <br> しばらくしてパトカーがやってきた。昨日とは違う警官二人だった。<br> 警官一人は、外壁や投げ込んで来たであろう道路を何やら調べ、<br> もう一人は俺と母に、「何か見なかったか?」「その時の状況は?」などなど、漠然とした事を何度も聞いて来た。<br> 最後に警官が、不安を煽るような事を言って来た。<br> 「たしか、昨日もいやがらせを受けているんですよね?<br> おそらく犯人は、すぐにでも同じような事をしてくる可能性が高いです」と。<br> 俺はたまらず、<br> 「あの呪いの女なんです!コートを着てる40歳ぐらいの女なんです!早く捕まえてください!」<br> と半泣きになって懇願した。<br> <br> <br> '''774 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 04:31:16 ID:UOWDTjZwO'''<br> すると警察官は、<br> 「さっきね、山を見てきたんだよ・・・<br> 犬の死体も、板に彫られたお友達の名前も、あと女の子の写真もあったよ。<br> 今からそれを調べて、必ず犯人捕まえるから!」<br> と言い、俺の肩をポンと叩くと、母の元へ行き何やら話していた。<br> 「主人に連絡を・・・」みたいな事を言われていたようだ。<br> 壁に付いた蛙の染み、及びその死体の写真を撮り、1時間程で警官達は帰って行った。<br> <br> しばらくして父親が帰宅した。まだ5時前だった。昨日の今日だから心配になったのだろう。<br> 夕食の準備をしている母も、夕刊を読んでいる父も無言だったが、どことなくソワソワしているのが分かった。<br> もちろん俺自身も、次にいつ『中年女』が来るのか不安で仕方なかった。<br> その日の晩飯は家族皆が無口で、只テレビの音だけが部屋に響いていた。<br> <br> そして夜11時過ぎ、皆で床に就いた。用心の為、一階の居間は電気を点けっぱなしにしておくことになった。<br> <br> <br> '''775 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 04:40:45 ID:UOWDTjZwO'''<br> その夜も家族揃って同じ部屋で寝た。<br> もちろんなかなか寝付けなかった。<br> <br> どれぐらい時間が過ぎただろう。<br> 突然玄関先で、「オラァー!!」とドスの効いた男の声とともに、<br> 「ア゛ー!ア゛ー!」と聞き覚えのある奇声、『中年女』の叫び声が聞こえた。<br> 俺達家族は皆飛び起き、父が慌てて玄関先に向かった。<br> 俺は母にギュッと抱き締められ、二人して寝室にいた。<br> カチャカチャ・・・ガラガラガラガラ!<br> 父が玄関の鍵を開け、戸を開ける音がした。<br> <br> <br> '''782 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 04:55:14 ID:UOWDTjZwO'''<br> 戸を開ける音と共に、<br> 「ア゛ー!!チキショー!ア゛ァー!!ア゛ァァァァ!」<br> 再び『中年女』の叫びが聞こえて来た。<br> 「大人しくしろ!」「オラ!暴れるな!」と、男の声もした。<br> この時、俺は「警官だ!警官に捕まったんだ!」と事態を把握した。<br> 中年女は奇声を上げ続けていた。<br> 俺はガクガク震え、母の腕の中から抜けれなかったが、<br> 父親が戻って来て、「犯人が捕まったんだ。お前が山で見た人かどうかを確認したいそうだが・・・大丈夫か?』と 尋ねてきた。<br> もちろん大丈夫ではなかったが、これで本当に全てが終わる。終わらせることが出来る!と自分に言い聞かせ、<br> 「・・・うん』と返事し、階段をゆっくりと降り、玄関先に向かった。<br> 玄関先から「オマエーっ!チクショー!オマエまで私を苦しめるのかー!」と凄い叫び声が聞こえ、足がすくんだが、<br> 父が俺の肩を抱き、二人の警官に取り押さえられた『中年女』の前に俺は立った。<br> <br> <br> '''791 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 05:10:12 ID:UOWDTjZwO'''<br> 俺は最初、恐怖の余り、自分の足元しか見れなかったが、<br> 父に肩を軽く叩かれ、ゆっくりと視線を『中年女』に送った。<br> 両肩を二人の警官に固められ、地面に顎を擦りつけながら、『中年女』は俺を睨んでいた。<br> 相当暴れたらしく、髪は乱れ、目は血走り、野犬の様によだれを垂れていた。<br> 「オマエー!オマエー!どこまで私を苦しめるー!」<br> 訳のわからない事を『中年女』は叫び、ジタバタしていた。<br> それを取り押さえていた警官が、「間違いない?山にいたのはコイツだね?」と聞いてきた。<br> 俺は中年女の迫力に押され、声を出すことが出来ず、無言で頷いた。<br> 警官はすぐに手錠をはめ、「貴様!放火未遂現行犯だ!」と言った。<br> <br> 手錠をはめられた後も、ずっと奇声を発し暴れていたが、警官が二人掛かりでパトカーに連行した。<br> そして一人だけ警官がこちらに戻って来て、「事情を説明します」と話し出した。<br> <br> <br> '''802 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 05:27:36 ID:UOWDTjZwO'''<br> 警官「自宅前をパトロールしてると、玄関に人影が見えまして、<br> あの女なんですけど・・・しゃがみ込んで、ライターで火を付けていたんですよ。<br> 玄関先に古新聞置いてますよね?』<br> 母「いえ、置いてないですけど・・・?」<br> 警官『じゃあ、これもあの女が用意したんですかねー?」と指差した。<br> そこには新聞紙の束があった。確かに、うちがとっている新聞社の物では無かった。<br> 警官が「ん?」と何かに気付き、新聞紙の束の中から何かを取り出した。<br> 木の板。<br> それには『○○○焼死祈願』と、俺のフルネームが彫られていた。<br> 俺は全身に鳥肌が立った。やはり俺の名前を調べ上げていたんだ。<br> もし警察がパトロールしていなかったら・・・ と、少し気が遠くなった。<br> 母は泣きだし、俺を抱き締めて頭を撫で回してきた。<br> 警官はしばらく黙っていたが、<br> 「実はあの女・・・少し精神的に病んでまして・・・<br> ○○町にすんでいるんですけど、結構苦情・・・まぁ、同情の声というのもあるんですがねぇ・・・」<br> と、中年女の事を語りだした。<br> <br> <br> '''810 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 05:55:14 ID:UOWDTjZwO'''<br> 「あの女、1年前に交通事故で、主人と息子を亡くしてまして・・・<br> それ以来、情緒不安定と精神分裂症というか・・・まぁ近所との揉め事なども出てきだしましてね。<br> 山で発見された少女の写真で、あの女の特定は出来ていたんですよ。<br> 二年前の交通事故・・・あの少女が道路に飛び出してきて、ハンドルをきって壁に衝突。<br> それで主人と息子が亡くなったんですよ・・・<br> 飛び出した少女は無傷で助かったんですが・・・以来、あの少女の家にも散々嫌がらせをしているんですよ。<br> ただ事故が事故なだけに、少女の家からは被害届けはでてないんですが・・・<br> あの少女を相当怨んでいるんでしょうね・・・」<br> <br> 俺はその話を聞き、同情などは一切出来なかった。<br> むしろ『中年女』の執念深さがヒシヒシと伝わってきた。<br> 何よりも、警官も認める情緒不安定・精神分裂症。<br> これでは、すぐに釈放になるのではないか?<br> 釈放後、また『中年女』の存在に怯え生きていかなければならないのか?<br> 警官の話を聞き、安堵感よりも絶望感が心に広がった。<br> <br> <br> '''813 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/07(日) 06:10:00 ID:UOWDTjZwO'''<br> それから5年。<br> 俺、慎、淳は、それぞれ違う高校に進んでいた。<br> 俺達はすっかり会うことも無くなり、それぞれ別の人生を歩んでいた。<br> もちろん、『中年女』事件は忘れることが出来ずにいたが、恐怖心はかなり薄れていた。<br> <br> そんな高一の冬休み、ひさしぶりに淳から電話が掛かってきた。<br> 『おう!ひさしぶり!』<br> そんな挨拶も程ほどに、<br> 『実は単車で事故ってさぁ・・・足と腰骨折って入院してんだよ』<br> 「え?!だっせーな!どこの病院よ?寂しいから見舞いに来いってか?」<br> 『まぁ、それもあるんだけどさぁ・・・<br> お前、『中年女』の事って覚えてる?事件の事じゃなくってさぁ・・・顔、覚えてる?』<br> 「何で?何だよ急に!」<br> 『毎晩、面会時間終わってから・・・変なババァが、俺の事を覗きに来るんだよ・・・ニヤつきながら』<br> <br> <br> '''889 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/08(月) 04:07:08 ID:PxVIZDoHO'''<br> 淳の発した言葉を聞いたとたんに、『中年女』の顔を鮮明に思い出した。<br> 始めて出会った、あの夜の歯を食いしばった顔。<br> 下校時に出会った、いやらしいニヤついた顔。<br> 自宅玄関で見た、狂ったような叫び顔。<br> あれから忘れる努力をしていたが、決して忘れることの出来ないトラウマだった。<br> 俺は淳に、「何言ってんだよ?!もう忘れろ!ほんっとオメーって気が小せぇーなぁ?!」と答えた。<br> 自分自身にも言い聞かせるように。<br> 『そーだよな・・・いや、こーゆーとこって、妙に気が小さくなるんだよ!』<br> 「そーゆーとこ、変わってねーな!」と余裕を見せた。<br> 俺自身も、あの日のまま成長していないが。<br> <br> そして入院している病院を聞き、「近いうちにエロ本持って見舞いに行くよ!」と言い電話を切った。<br> 電話を切った瞬間、何故か胸騒ぎがした。<br> 『中年女』<br> 淳の言葉が、妙に気に掛かりだした。<br> <br> <br> '''890 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/08(月) 04:12:16 ID:PxVIZDoHO'''<br> 電話を切った後、しばらく考えた。<br> まさか、今更『中年女』が現れるはずが無い・・・<br> それにあいつは捕まったはず・・・いや、釈放されたのか??<br> というか、今思えば俺達三人は、『中年女』に何をしたわけでも無い。<br> ただ、『中年女』の呪いの儀式を見てしまっただけなのに、こちらの払った代償はあまりにも大きい。<br> 偶然、夜の山で出会い、いきなり襲われた。<br> 俺達は何一つ『中年女』から奪っていない。それどころか、傷付けてもいない。<br> 『中年女』は俺達からハッピーとタッチを奪い、秘密基地を壊し、何より俺達三人に恐怖を植え付けた。<br> 『中年女』がいくら執念深いといっても、さすがにもう俺達に関わってくるとは思えない。<br> こんなことを思うのも何だが、怨むなら写真の少女にベクトルが向くはず!<br> 俺は強引に、俺自身を納得させた。<br> <br> <br> '''892 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/08(月) 04:33:09 ID:PxVIZDoHO'''<br> 2日後、俺はバイトを休み、本屋でエロ本を3冊買ってから、淳の入院している病院に向かった。<br> 久しぶりに淳に会うというドキドキ感と、淳が電話で言っていた事に対するドキドキ感で、複雑な心境だった。<br> <br> 病院に着いたのは昼過ぎだった。<br> 淳の病室は三階。俺は淳のネームプレートを探し出した。<br> 303号室の六人部屋に淳の名前があった。<br> 一番奥、窓側の向かって左手に淳の姿が見えた。<br> 「よう!淳、久しぶり!」<br> 「おう!まぢひさしぶりやなぁ!」<br> 思ったより全然元気な淳を見て少し安心した。<br> 約束のエロ本を渡すと、淳は新しい玩具を与えられた子供の如く喜んだ。<br> そして他愛も無い話を色々した。<br> 淳といると、小学生の頃に戻ったようでとても楽しかった。無邪気に笑えた。<br> <br> あっという間に時間は経ち、面会終了時間が近づいてきた。<br> 「んぢゃ、もうそろそろ帰・・・」と俺が言いかけると、<br> 「実はさぁ、電話でも言ったんだけど」と淳が、真顔で何かを言いかけた。<br> <br> <br> '''893 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/08(月) 04:44:17 ID:PxVIZDoHO'''<br> 「中年女の事だろ?」と俺は言った。<br> すると淳は、<br> 「気のせいだとは思うんだけど・・・いつもこの時間に来るオバさんがいてさぁ・・・<br> 何かこう・・・引っ掛かるっつーか・・・」<br> 俺は「だから気のせいだって!ビクビクすんなよ!」と強気な発言をした。<br> すると淳は少しカチンと来たのか、<br> 「だから、勘違いかもしんねーっつってんぢゃん!ビビりで悪かったな!」<br> 空気が重くなった。<br> 俺は空気を読み、淳に謝ろうとした。<br> そのとき、<br> ガラガラガラ・・・<br> 廊下に、台車のタイヤ音が響いた。<br> 淳が「来た・・・」とつぶやく。<br> 俺は視線を部屋の入口に向けた。<br> ガラガラガラ<br> 台車は扉の前に止まったようだ。<br> そして、扉が開いた。<br> そこには、上下紺色の作業着を着たオバさんが居た。<br> 俺は「何だよ!脅かすなよ!ゴミ回収のオバさんじゃねーか」と、少し胸を撫で降ろした。<br> そのオバさんは、患者個人個人のごみ箱のゴミを回収しだし、最後に淳のベットに近づいてきた。<br> 淳が小声で「見てくれよ!」<br> 俺はそのオバさんの顔をチラッと見た。<br> <br> <br> '''894 :『ハッピー・タッチ』 ◆XhRvhH3v3M:2006/05/08(月) 04:49:40 ID:PxVIZDoHO'''<br> 「・・・!」<br> 俺は息を飲んだ。<br> 似ている・・・いや、『中年女』なのか?<br> 俺は目が点になり、しばらくその人を眺めていると、<br> そのオバさんはこちらを向き、ペコリと頭を下げて部屋を出て行った。<br> 淳が「どう?やっぱ違うか?!俺ってビビりすぎ?」と聞いてきた。<br> 俺は「全然ちげーよ!ただの掃除オバさんぢゃん!」と答えた。<br> いや、しかし似ていた。他人の空似なのか・・・?<br> <br> <br>
編集内容の要約:
Wikiminatiへの投稿はすべて、クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 (詳細は
Wikiminati:著作権
を参照)のもとで公開したと見なされることにご注意ください。 自分が書いたものが他の人に容赦なく編集され、自由に配布されるのを望まない場合は、ここに投稿しないでください。
また、投稿するのは、自分で書いたものか、パブリック ドメインまたはそれに類するフリーな資料からの複製であることを約束してください。
著作権保護されている作品は、許諾なしに投稿しないでください!
編集を中止
編集の仕方
(新しいウィンドウで開きます)
この語句を全文検索
エラーが発生しました…
閉じる