くねくね

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    概要[編集 | ソースを編集]

    くねくねは、ネット掲示版での書き込みが元になり広まった都市伝説。

    物語[編集 | ソースを編集]

    103 名前:餅持ちプラチナ : 04/08/08 22:39 ID:7Z6K7XkI

    これは小さい頃、秋田にある祖母の実家に帰省した時の事である。 年に一度のお盆にしか訪れる事のない祖母の家に着いた僕は、
    早速大はしゃぎで兄と外に遊びに行った。
    僕は、爽やかな風を浴びながら、兄と田んぼの周りを駆け回った。
    そして、日が登りきり、真昼に差し掛かった頃、ピタリと風が止んだ。 と思ったら、気持ち悪いぐらいの生緩い風が吹いてきた。
    僕は、『ただでさえ暑いのに、何でこんな暖かい風が吹いてくるんだよ!』と、 さっきの爽快感を奪われた事で少し機嫌悪そうに言い放った。 すると、兄は、さっきから別な方向を見ている。
    その方向には案山子(かかし)がある。
    『あの案山子がどうしたの?』と兄に聞くと、兄は『いや、その向こうだ』と言って、ますます目を凝らして見ている。
    僕も気になり、田んぼのずっと向こうをジーッと見た。
    すると、確かに見える。
    何だ…あれは。

    遠くからだからよく分からないが、人ぐらいの大きさの白い物体が、くねくねと動いている。
    しかも周りには田んぼがあるだけ。
    近くに人がいるわけでもない。
    僕は一瞬奇妙に感じたが、ひとまずこう解釈した。
    『あれ、新種の案山子(かかし)じゃない?きっと!
    今まで動く案山子なんか無かったから、農家の人か誰かが考えたんだ!
    多分さっきから吹いてる風で動いてるんだよ!』
    兄は、僕のズバリ的確な解釈に納得した表情だったが、その表情は一瞬で消えた。
    風がピタリと止んだのだ。
    しかし例の白い物体は相変わらずくねくねと動いている。
    兄は『おい…まだ動いてるぞ…あれは一体何なんだ?』と驚いた口調で言い、
    気になってしょうがなかったのか、兄は家に戻り、双眼鏡を持って再び現場にきた。
    兄は、少々ワクワクした様子で、『最初俺が見てみるから、お前は少し待ってろよー!』と言い、はりきって双眼鏡を覗いた。
    すると、急に兄の顔に変化が生じた。
    みるみる真っ青になっていき、冷や汗をだくだく流して、ついには持ってる双眼鏡を落とした。
    僕は、兄の変貌ぶりを恐れながらも、兄に聞いてみた。
    『何だったの?』
    兄はゆっくり答えた。
    『わカらナいホうガいイ……』
    すでに兄の声では無かった。
    兄はそのままヒタヒタと家に戻っていった。
    僕は、すぐさま兄を真っ青にしたあの白い物体を見てやろうと、落ちてる双眼鏡を取ろうとしたが、兄の言葉を聞いたせいか、見る勇気が無い。
    しかし気になる。
    遠くから見たら、ただ白い物体が奇妙にくねくねと動いているだけだ。
    少し奇妙だが、それ以上の恐怖感は起こらない。
    しかし、兄は…。
    よし、見るしかない。
    どんな物が兄に恐怖を与えたのか、自分の目で確かめてやる!
    僕は、落ちてる双眼鏡を取って覗こうとした。

    その時、祖父がすごいあせった様子でこっちに走ってきた。
    僕が『どうしたの?』と尋ねる前に、
    すごい勢いで祖父が、『あの白い物体を見てはならん!見たのか!お前、その双眼鏡で見たのか!』と迫ってきた。
    僕は『いや…まだ…』と少しキョドった感じで答えたら、祖父は『よかった…』と言い、安心した様子でその場に泣き崩れた。
    僕は、わけの分からないまま、家に戻された。
    帰ると、みんな泣いている。
    僕の事で?いや、違う。
    よく見ると、兄だけ狂ったように笑いながら、まるであの白い物体のようにくねくね、くねくねと乱舞している。
    僕は、その兄の姿に、あの白い物体よりもすごい恐怖感を覚えた。
    そして家に帰る日、祖母がこう言った。
    『兄はここに置いといた方が暮らしやすいだろう。
    あっちだと、狭いし世間の事を考えたら数日も持たん…うちに置いといて、何年か経ってから、田んぼに放してやるのが一番だ…。』
    僕はその言葉を聞き、大声で泣き叫んだ。
    以前の兄の姿は、もう、無い。
    また来年実家に行った時に会ったとしても、それはもう兄ではない。
    何でこんな事に…ついこの前まで仲良く遊んでたのに、何で…。
    僕は、必死に涙を拭い、車に乗って、実家を離れた。
    祖父たちが手を振ってる中で、変わり果てた兄が、一瞬、僕に手を振ったように見えた。
    僕は、遠ざかってゆく中、兄の表情を見ようと、双眼鏡で覗いたら、兄は、確かに泣いていた。
    表情は笑っていたが、今まで兄が一度も見せなかったような、最初で最後の悲しい笑顔だった。
    そして、すぐ曲がり角を曲がったときにもう兄の姿は見えなくなったが、
    僕は涙を流しながらずっと双眼鏡を覗き続けた。
    『いつか…元に戻るよね…』
    そう思って、兄の元の姿を懐かしみながら、緑が一面に広がる田んぼを見晴らしていた。
    そして、兄との思い出を回想しながら、ただ双眼鏡を覗いていた。

    …その時だった。 見てはいけないと分かっている物を、間近で見てしまったのだ。

    引用元:死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?6